─ Alice ?─
…………


アリスはチェシャ猫を選んだ。



あれからどのくらい経っただろうか。


この国は主を無くし、皆の魂はさまよっていた。



城には正気で無い住人たちが押し寄せ、アリスを求め、血を浴びせあっていた



そんな光景、興味が無い。




僕が興味を抱いているのは、いつだってありすだけ。



寂しくて 悲しい 哀れな女の子



薔薇に記憶を奪われてしまった君を追い、やっと見つけた


君とチェシャ猫。



猫は隠し事ばっかりしていた



だから僕が 君に真実を伝える為に



『残像』を見せてあげた



君の心に 深く残った傷の残像



本当に君は怖がりで


僕が側にいてあげないと泣いてばっかりだ




「──会いたくなかった。」


悲しいことを言わないでおくれ。僕は君に会いたかったんだ。


「黒兎さん。」


もうお兄さんとは呼んでくれないんだね。寂しいな。



「私は貴方を選ばないわ。」

そんなはずはないよ。強がりは似合わないよ。




だから僕は優しい言葉で君を安心させてあげたんだ


誰も君を殺そうとしないよ
もう安心していいんだよ、って。


< 381 / 397 >

この作品をシェア

pagetop