─ Alice ?─



裁判が行われるまで、あと三分。

おもむろに懐中時計を取り出す。



「この時計はこの国の時間




───時は止まる。」




ありすは不安そうに僕を見つめる。




あと、二分。



カチ カチ と秒針の音は響く



僕は秒針に軽く触れ、時を止めた。


時刻は14時59分。裁判まであと一分。





「────ありすはありすのまま。成長することなく、今の姿のまま、ね。」




焦るありすの表情。声。仕草。


嗚呼、なんて愛らしい。



今すぐ君に噛みつきたいよ。





「まって…待って黒兎さん!!」

僕を追いかける君はまるで物語の主人公のようだよ




わざとありすが追い付かないスピードで逃げて、愛を確かめるんだ。



僕はわざと、針を進める。


   カチ    カ チ



二秒。たったニ秒だけ。


時刻は14時59分02秒。



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