─ Alice ?─
ゆっくりと、顔をあげると、チェシャ猫の手には赤い首輪が握られていた。
「この国はもう手遅れだ。
元通りには、もう戻せない。
だが、この国を救う方法はある。」
ドクン
救える ?
私が、この国を救う?
「あ、はは…なに、今更…。」
今更、この国を救うだなんて
救えるなんて
「──ありす。この国を救うか。この国に呑まれるか。どちらかしか道はない。俺は、お前の選択した道について行こう。
この国が滅んでも。」
訳がわからない。
救う だなんて 最近は考えていなかった。
皆に愛されたい。としか考えられなかった。
また昔のように
皆から アリス と呼ばれたい
「余計な真似をするな。チェシャ猫。」
凄まじい殺気を感じ、後ろを振り向くと、黒兎さんがこちらを睨み付けていた。
「僕とありすの世界を壊すな。」
ガタガタと体を震わせ、怒りを全身で表している。
「黒兎。もう無理だ。終わりにしよう。時を止め、ありすを苦しめたところで、もう昔には戻らない。戻れないんだよ。」
「僕は昔に戻りたいんじゃない。全て、消したいんだ。全て消して、僕とありすだけの世界を作るんだ。
そのためには裁判を行う必要がある。
力を手に入れる為だ。…だけど、僕はありすに裏切られた。だから、ありすを苦しませて、復讐するんだ。
僕はありすが好きだ。大好きだ。ありすだけを愛している。いつだって、ありすだけを見てきた。名前を付けたあの日から、僕とありすは離れられない運命なんだ。
割って入ってきた君に、邪魔される筋合いはないよ。」