─ Alice ?─
「猫は嘘吐きだよ。ありす…君は僕のことが好きだろう?
昔の気持ちを忘れないで。」
黒兎さんは、震えていた。
私に手を差し伸べ、何かを恐れながら、震えていた。
「………黒兎さんを、救いにきたの。大好きだった、黒兎、お兄さんを救いに…戻ってきた。」
「僕は君がいるだけで報われているよ。今更、何も求めないよ。君がいるだけでいい。だから、チェシャ猫から離れて、こっちにおいで。」
歩み寄り、私の手を掴む。
黒兎さんの手はとても冷たい。
「黒兎………もう、諦め「僕とありすの世界なんだ!ありすが僕のことを好きでいる限り、この世界は消えない!滅びない!ありすはひとりぼっちだ。僕と同じ、ひとりぼっちなんだ。だから、2人でいると決めたんだ。ありすに出会ったあの日から、僕たちは2人でいると………。」」
悲しそうな瞳。焦りが見えた。
「白兎が、ありすを返したりしなければ、僕らはずっと一緒にいれた。許せなかった。だけど、もう白兎はいない。シロウサギも、もう1人の白兎も…兎は僕だけになった。だから、もうありすを返す奴はいないんだ。チェシャ猫だって、ありすを返すことには反対だったはずだ。なんで、今更、こんなまねするんだよ…!」
ムキになり、大声で叫びながら、黒兎さんは訴える。
怒りや悲しみを表し、頬に涙が伝う。