─ Alice ?─


「私が、黒兎さんを嫌いになれば、この国は消えてしまうの?」


私の言葉に、黒兎さんが固まる。


「な、に…言ってるんだいありす…。」


明らかに動揺した声。

チェシャ猫は目を閉じ、溜息を吐く。


「これは、夢なの?現実なの?」


黒兎さんの、手を掴む力が強まる。


「ありすはそんなこと気にしなくていいんだよ。君は僕と一緒にいるだけでいいんだ。僕が生きている限り、君と僕は離れられない運命なんだから。」


「じゃあ、元の世界で一緒にいる。」


チェシャ猫は俯く。黒兎さんは涙を流したまま、私の目を見る。




「元の世界……。君は、まだあんな世界を求めているのかい?あんな、君にとって良いことなどなかった、世界を。」


母に捨てられ 希望を失った

世界中に私の味方なんていないと思った


けれど黒兎さんに出会い

不思議の国の住人と出会い

1人じゃないと思えた。


黒兎さんのおかげ 裏切るなんてできない 嫌いになるなんてできないの


けれど 貴方を救えないなんて
そんなの悲しすぎる。


だから




「黒兎さんがいなくなったら、またひとりぼっちね。」


黒兎さんを抱き締め、時計の針を回す。



カ チ 。




「裁判を始めよう。罪人ありす。」





貴方を救う為なら、




私はひとりぼっちでもいい。

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