─ Alice ?─



どこから聞こえたのか

誰の声なのか



理解する前に、痛みが私を支配した。



聞こえる制止の声 叫び


目に映る悲しい表情 涙



倒れた衝撃 心臓の鼓動 赤い液体




遠退く意識 だが着実に近づく現実と孤独。




目が覚めたらどこにいるのだろう


私に名前はあるのだろうか




目から自然に流れる液体は涙か血か


わからぬままこの国から消えていく








ありす アリス


    さよなら アリス



不思議の国から私は消える




約束、果たしてくれるかしら


呑気に考えられるくらいから、きっと死ぬわけじゃないのね。


ただ、現実に戻るだけ。





「夢は、夢のままだよ。」


















真っ白な空間。



歩いても歩いても真っ白な空間。



コツコツと靴の音だけが響く。





ただ、ただ、何も考えずに前に進む。





───── ありす。



後ろから聞こえる愛しい人の声。




──── イカナイデ。




呼び止める声。愛しいあの人。



一瞬、心が揺らぎ、後ろを振り向く。だが、愛しい人の姿は見当たらない。





また、前に進む。




─── 夢は 夢のままだよ。







手を延ばすと、金色のドアノブを掴んでいた。



       ガチャ



白い空間に色が差し込む。





けれど色は、見覚えのある景色とは違っていた。









「永遠に、夢の続きを見させてあげるよ。ぼくのありす。」








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