サロン・ド・カトレア へ ようこそ

「千佳さぁー知ってる?真山くん、4月から仕事でF県に行っちゃうらしいって」

ペットボトルから
豪快にお茶を飲み干した真由子(モテない女友達その①)は、私の顔をのぞきこみながら言った。

中途半端な春休み。

行くとこも、することもない私達は
それぞれの家を拠点として
本日はわたくし雛川家に引きこもってムダなガールズトークに花を咲かせていた。


「知ってるよぉ。
真山くんのことなら
全部(はぁと)」


私は、胸の前で
手を組むと
遠い彼方を潤んだ目で
見上げて呟いた。


「いいのー?
もう、一生会えないかもしんないんだよ」


真由子は、ありったけの女力を振り絞り
健康すぎる黒髪を
かきあげながら
挑戦的な眼差しで私を見る。

< 13 / 34 >

この作品をシェア

pagetop