サロン・ド・カトレア
へ
ようこそ
「千佳さぁー知ってる?真山くん、4月から仕事でF県に行っちゃうらしいって」
ペットボトルから
豪快にお茶を飲み干した真由子(モテない女友達その①)は、私の顔をのぞきこみながら言った。
中途半端な春休み。
行くとこも、することもない私達は
それぞれの家を拠点として
本日はわたくし雛川家に引きこもってムダなガールズトークに花を咲かせていた。
「知ってるよぉ。
真山くんのことなら
全部(はぁと)」
私は、胸の前で
手を組むと
遠い彼方を潤んだ目で
見上げて呟いた。
「いいのー?
もう、一生会えないかもしんないんだよ」
真由子は、ありったけの女力を振り絞り
健康すぎる黒髪を
かきあげながら
挑戦的な眼差しで私を見る。