×-カケル-


結局テストはできなくて。
それでも何とか赤点を免れた。

俺ってなかなかやるな。
なんて、自分で自分を褒めてみた。

「だりぃな~」

授業をサボって屋上で昼寝中の俺。

寒くて昼寝どころじゃないのが現実だけど、吐いた息の白さに冬を感じずにはいられない。

屋上から見える景色はけっこう気に入っていて、高い建物が何もない自然に囲まれたこの田舎も、嫌いじゃない。

冷たい風が草木を揺らす。

「さみぃな」

独り言を呟き、あまりの寒さに屋上を去ろうとドアのノブに手を掛けると、ノブが勢いよく回り、見慣れた顔が目の前に現れた。


「見つけたー」

俺の顔を見るなりそう言って顔の筋肉を緩めたのは早苗だ。

短いスカートが、強い風に揺れる。

女は足を出していて冬は寒くて大変だな。なんてどうでもいいことを言いそうになってやめた。

そんなこと言ったら、俺、オヤジみたいだもんな。


< 14 / 73 >

この作品をシェア

pagetop