×-カケル-
どーなってんだ。
「なにすんだよ!」
俺は早苗の肩を強く押し、体を離した。
早苗は目をウルウル潤ませながら、ぷっくりとした唇をゆっくりと動かす。
「好きなの」
「は?」
「翔のことが好きなの」
おい、嘘だろ?
まさかの展開だ。
早苗が俺のことを好きだったなんて。
シンと静まり返る室内に、俺と早苗の呼吸音だけが響く。
「あ、いや、そのなんつーかさ」
眠気も一気に吹き飛んだ俺は、体を起こして早苗に続けた。
「好きな奴いるんだよね」
叶わない恋ってやつだけど。
「梓でしょ?」
「え?」
「翔をみてるからわかるんだ」
俺がヨシの気持ちに気づいたように、早苗も俺の気持ちに気づいていたってわけだ。