×-カケル-
ヨシは頷くと、何かを思い出したように切り出した。
「そう言えばお前、早苗に告られたんだって?」
「誰に聞いたんだよ!」
「早苗本人だよ」
あいつ。
女はすぐに話したがる。
わからない生き物だ。
「振ったらしいな」
「まあな」
これ以上突っ込まれたくなくて、俺は違う話題を探した。
それなのにヨシは、話題を逸らしてくれない。
「好きな奴いるんだって?」
「それは振る口実。好きな女なんていねーし」
全てを見透かしているようなヨシの目が、俺は苦痛でたまらなかった。
街中が浮かれ気分なように、俺だって本当は浮かれたいんだ。
「翔、お前さ……」
「あ?」
「いや。何でもない」
お前……に続く言葉が気になった。
ヨシは俺の気持ちに気づいているのか。
まさか。
そんなことないよな。
俺はうまくやっているはずだ。