×-カケル-
廊下を少し進んだ右側のドアの先がトイレ。
そして、その隣が梓の部屋だ。
トイレのドアに手を掛けながら、俺の視線は梓の部屋に向く。
中学1年生の夏休みを最後に、俺は梓の部屋に入っていない。
ちょうどその頃、俺は梓を女として意識し始めた。
なんつーか、梓の反応がいちいち気になって、ドキドキが止まらなかった。
長い睫毛とか。
大きな目とか。
柔らかそうな唇とか。
今でもふいに梓を自分のものにしたい衝動に駆られる。
いけないと思えば思うほど強くなるこの思いが、時々恐くなるほどだ。
用を済ませレバーを引くと、渦を巻いて勢いよく水が流れる。
俺の気持ちはグルグルと渦を巻いたまま流れない。
トイレの水のように、流れ出てくれたら楽なのに。