×-カケル-
それからすぐ後に、何事もなかったように戻ってきた梓と早苗。
俺は何も見ていない、聞いていない。
そう言い聞かせた。
「早く食おうぜ」
とっとと食べて、家に帰りたい。
そして何もかも忘れて眠りたい。
クリスマスなんてクソくらえだ。
梓の親が用意したサラダやチキンが食卓に並ぶ。
「クリスマスに鍋って何だかおかしいよね」と、ほんのり赤い目をした早苗が笑う。
俺はただひたすらに食事を口に運んだ。
同時に、苦手なビールやワインも飲んだ。
もう、なんでもいい。
酒のうまさなんて俺にはまだわからなくて、だけどアルコールの力ってすげーなって思うくらい、全てがどうでもよく思えた。
ふわふわして、グルグルして。
梓が二重にも三重にも見えてすぐ、俺の意識は薄れていった。