×-カケル-
「ん……。ちょっと……」
背後から声が聞こえる。
「大丈夫だよ。翔は寝てる」
梓とヨシの声。
俺の後ろにはベッド。
梓の、ベッド。
「やだよ、ヨシ。翔が起きちゃうって」
ギシっとベッドが軋む。
何だ。
何が起きているんだ?
「あっ……」
梓の吐息が漏れる。
「可愛いよ、梓」
聞きたくない聞きたくない。
俺に聞かせないでくれ。
硬直する体とは裏腹に、体温だけは異常に上昇する。
バクバクと音をたてる心臓と、汗ばむ手のひら。
繰り返し漏れ続ける梓の吐息に、もうどうにかなってしまいそうだ。
耳を塞ぎたい。
今すぐ部屋を飛び出したい。
誰か。
誰か。
助けてくれ。