×-カケル-
「ねえ、翔」
突然名前を呼ばれ、心臓がドキリと跳ねる。
上目遣いで早苗はゆっくりと体を起こした。
「後悔してる?」
「え?」
早苗は俺の顔色を伺いながら、今にも泣き出しそうな顔をした。
「後悔?するわけないだろ!!」
わざと力強く否定をした。
本当は頭の中いっぱいに“後悔”の気持ちが溢れていたけど、早苗にそんなこと言えるはずがない。
「順番が逆になったけど、俺たち付き合おう」
これは俺が考える精一杯の誠意なわけで。
「ほんとに?」
今もまだ少し暗い部屋に、目はすっかり慣れたというのに、早苗がどんな表情をしているか直視する勇気がない俺は、ただの意気地なしだ。