×-カケル-
「今日からあたしたち、彼氏と彼女になったんだね」
彼女の声は、かすかに震えている。
「そう、彼氏と彼女だよ」
本当の気持ちを悟られないよう、俺は真っ直ぐに早苗を見つめた。
俺は早苗を利用した。
自分のことが好きだと言ってくれた早苗を、梓への思いから逃げるために抱いた。
付き合うしかないじゃないか。
他に選択肢なんて、ない。
「おいで、早苗」
抱き寄せた早苗は、その小さな肩を不安そうに震わせている。
不安にさせているのは俺で。
「すき……だよ」
傷つけないために、
好きになるために、
俺は自分自身をも騙してやる。
軽いキスをおとすと、俺は着たばかりのTシャツを脱ぎ、再び床に落とした。