×-カケル-
嘘×夢-side 梓-
小学5年生の運動会。
ゴールまであと少しだった。
目の前のゴールテープに手を伸ばせば届きそうな距離。
ぐらりと視界がぶれ、バランスを崩したあたしは勢いよく地面に叩きつけられた。
リレーの、アンカーだった。
やっとの思いで顔を上げると、あたしの横を隣のクラスの男の子が走り抜ける。
同時に聞こえる歓喜の声。
ゴール……したんだ。
次々にすり抜ける生徒たちが、まるで自分とは別世界の人のように思える。
期待を背負い一番で受け取ったバトン。
今は手から離れ、寂しそうに地面に転がっている。
膝からは真っ赤な血が流れだしている。
痛みを感じないのは、悔しさや申し訳ないと思う気持ちが強いからだ。