×-カケル-
毎朝3人で通う通学路。
「今日は翔に報告があるんだ」
マンションを出てすぐに、ヨシが翔に切り出した。
「なんだよ」
まだ眠たそうな目を擦り、ヨシに目を向ける翔。
潰された革靴が、コンクリートに擦れて音をたてる。
「俺たち、付き合いはじめたんだ」
あたしの手を握り、嬉しそうに、そしてどこか勝ち誇ったように笑うヨシ。
「マジかよ……」
一瞬にして翔の表情が曇る。
「何だよ。祝福してくれないわけ?」
ふてくされたようにヨシが言う。
「いや、ビックリしたんだよ。おめでと。ヨカッタな」
無理して笑う翔。
どうしてそんなに悲しい顔をするの?
あたしが迷惑だったんでしょ?
邪魔だったんでしょ?
「大切にしてもらえよ」
あの頃に比べて大きくなった手であたしの頭を撫でようとして、翔は慌ててその手を引っ込めた。
「もう、一緒に学校いけねーな」
寂しそうに笑った翔から、目が離せなかった。