×-カケル-
あたしはズルい。
ヨシと付き合いながら、まだ翔を思っている。
付き合っているのだから当たり前にある“体の関係”を、翔に知られたくない。
「こんな気持ちで付き合うなんて、ヨシに悪いよ」
涙が溢れそうになった。
自分勝手な感情に、腹が立つ。泣いていいのはあたしなんかじゃないのに。
「由貴くんと別れたら翔とも気まずくなる。それは嫌でしょう?」
「……うん」
繭の言う通りだ。
翔はヨシがいないとあたしを避ける。
ヨシがいるからあたしたちの関係は成り立っている。
別れたら、この関係は崩れてしまう。
繭は飲み干したオレンジジュースの氷を噛りながら、何か思いついたように言った。
「由貴くんと別れて翔に告れば?このままでいるよりそっちのほうがスッキリするんじゃない?」
「そうなんだけど……」
自分勝手な考えだとわかっているけど、ヨシを失うことも恐い。
あんなに優しくて、あたしを愛してくれている人を傷つけることなんてできない。