×-カケル-


ヨシの気持ちには薄々気づいていた。

それもそうだろ?
いつも一緒にいれば、見たくないものも目に映る。

梓を見るヨシの目が、言葉以上にその気持ちを物語っていたから。

だけどさ、俺もずっと梓だけを見てきたんだ。

きっとヨシが梓を好きになる前から、ずっとずっと好きだったんだ。


「がんばれよ」

俺はヨシにそう言ったっけ。

そんなこと本当は微塵も思ってない。

でも、ヨシは大切な親友なんだ。失いたくない友達なんだよ。

意気地なしって言われようと、俺はこういう人間だ。


地元にある高校に進学した俺たちは、今も仲良しだ。

けどひとつ、変わったことがある。

2ヶ月前から、ヨシと梓が付き合いだした。


俺は決めたんだ。

この気持ちは、胸の奥にしまうんだって。


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