×-カケル-


12月の澄んだ空気に、俺と早苗の会話が吸い込まれていく。

「テストどう?」

「全然ダメ。てかやる気ねーし」

別に赤点だっていいんだ。
なんだっていい。

「しっかりしなよね」

呆れ顔の早苗を横目に、大きなあくびをひとつ。

どうにでもなってくれ、俺の人生。

靴底の擦れた革靴に、荷物の入っていない汚れたカバン。

見慣れた道のりにすっかり馴染んだ俺。


「梓!ヨシ!」

俺の隣で大きな声を出し、前を歩く2人の背中に声を掛ける早苗。

バカ。
余計なことしやがって。

チッ。と、思わず舌打ちをしそうになる。

これ以上俺を憂鬱にしないでくれ。


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