茜空


すると
さっきの男の子が
ちょこちょこと歩み寄ってきた。



「おねーちゃん、どーしたの?
 おなかイタイイタイの?」


心配そうに顔を覗き込んでくる。



「ううん。大丈夫…。
 何でもないのよ。」


慌てて涙をぬぐって答える。



「よいしょっと。」


男の子は
あたしの座ってるベンチに登り、
あたしの頭をそっと撫でた。



「おねーちゃん、いー子いー子。
 ぼくね、りょうちゃんにも
 こうしてあげるの。」



「りょうちゃん?」


「うん、ぼくのおとーと。
 赤ちゃんだからすぐ泣くの。
 でもね、
 ぼくがいー子いー子するとぉ、
 りょうちゃんね、
 ニコニコになるんらよっ」



いい子いい子をしながら、男の子はあたしに語り掛ける。



その手は優しくて。



先輩も…
こんなふうにあたしを
いい子いい子してくれたっけ…。


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