茜空

「そっかぁ。
 キミは優しいお兄ちゃんなんだ
 ね。」



「うんっ!
 だってぼくはヒーローなんだ!
 うるとらまんみたいに
 りょうちゃん守ってあげるの!
 とぉーっっ!!」


男の子は
ピョーンとベンチから飛び降りた。




ちょうどその時
男の子のお母さんが
呼び掛けながら近寄って来た。


「しょう!
 もう帰るよぉ。
 すみませーん、うちの子が
 お邪魔しちゃってぇ。」


「あ…いえ…。」



「こぉら、しょう!
 …ごめんなさいね。
 この子、綺麗なお姉さん見ると
 すぐ話し掛けちゃって…。
 パパとそっくりで。」



少しおどけながら
お母さんが言った。



「おい、何言ってんだよぉ。
 あ、スミマセン、うちの息子が…」


後ろから追い掛けてきた
お父さんも楽しそうに話し掛けてくる。



なんだか凄く微笑ましくて、
自然と笑顔が戻ってくる。


「あたしもしょうくんと
 お話できて楽しかったです。
 ありがとうございました!」



「おねーちゃん、ばいばーい!」


手を振りながら
男の子とその家族が帰っていく。


幸せそうな
背中。


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