茜空

「俺、ここの景色、すっげ好きなんさ。
夕陽がさ、水平線に沈んでく
この時間のこの景色。

お前と初めて会ったのも
この場所だし。

…俺さぁ、将来ここで息子とキャッチボールすんの夢なんて。

…東京行ったらこの景色、
なかなか見れねなるよなぁ…」



先輩。


東京に行っても

そのまんまの先輩でいてね。


変に都会に染まったりしないでね。


お願い…。




「先輩…。

 ここの景色忘れないで。

 忘れたら承知しねっけね…」



「おぉ、当たり前だ!」



先輩は笑いながら、
またあたしの頭を撫でた。


先輩。


将来…


キャッチボールをするあなたと
あなたの息子…


その傍らで


微笑んでいる


その子のママは


誰ですか…?



先輩。


私にも


小さな夢があるの。


大好きな人の


ずっとそばにいる事。


そして


愛してやまない人達の


一生支えになる事なんだよ。


先輩。
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