茜空
あたしがちょっぴり感傷に浸っていると、和哉先輩がこんなことを言いだした。
「なぁ、太陽が水平線に沈む瞬間
耳、澄ましてみ。
《ジュッ》って音するっけ」
「マジでっ!?」
日はまさに水平線に触れようとしている。
あたしは耳を澄まして夕陽を見つめ、音がするのを待った。
………………。
……………?
音なんて………しない。
「……?音しないよ?」
先輩は大爆笑。
「え!お前、本気にしてたん??
んなわけねーろが!
バッカだなぁ!」
先輩は涙を流さんばかりにヒャーヒャー言って喜んでる……。
「ええっ!?騙したん?
もうっ!なにさーっ!
からかってぇっ!」
ふくれっ面になったあたしのほっぺを、先輩は笑いながらつっついた。
「そうやってすぐ引っ掛かる
単純で天然なとこも
可愛いんだけどな」
先輩は、あたしのほっぺを
自分のおっきな手で包んだ。