獣~けだもの~
「わ……判った。
己が悪かった。
ほれ、この通り謝るし、言ったことは取り消すから、勘弁してくれ……!」
「やだね」
じりじりと、後ろに下がりながら、命ごいをする、武蔵坊に。
遮那王は、詰め寄り、言った。
「口は、災いのもとだと知ったか!
そなたも、武を志す者ならば、ここで見事散ってしまえ!」
「そんな、無茶な!」
叫ぶ、武蔵坊の声など、一言も聞かず。
遮那王が、太刀に、ぐっと力を込めた、その時だった。
ひょうっ!
そう。
闇を切り裂き、まっすぐに飛んだのは、扇、一つ。
それが、見事、狙いを過たず。
遮那王の、太刀を握る手を打って、落ちた。
「……っ!」
その、痛さに。
遮那王は、太刀を落としかけて、あわてて拾う。
その隙をついて、武蔵坊は、すたこらと逃げ出し、遮那王と間合いを広くとった。
「そこにいるのは、誰だ!」
扇を当てたのが、狙って、ならば。
こんな闇を貫く目を持つ武芸者か。
勝負あった武蔵坊より、大分技量が上かもしれない。
遮那王は、油断なく身構えた。
が。
……しかし。
月光の中に出て来た者を見て、肩を落とした。
「……なんだ、そなたか」
己が悪かった。
ほれ、この通り謝るし、言ったことは取り消すから、勘弁してくれ……!」
「やだね」
じりじりと、後ろに下がりながら、命ごいをする、武蔵坊に。
遮那王は、詰め寄り、言った。
「口は、災いのもとだと知ったか!
そなたも、武を志す者ならば、ここで見事散ってしまえ!」
「そんな、無茶な!」
叫ぶ、武蔵坊の声など、一言も聞かず。
遮那王が、太刀に、ぐっと力を込めた、その時だった。
ひょうっ!
そう。
闇を切り裂き、まっすぐに飛んだのは、扇、一つ。
それが、見事、狙いを過たず。
遮那王の、太刀を握る手を打って、落ちた。
「……っ!」
その、痛さに。
遮那王は、太刀を落としかけて、あわてて拾う。
その隙をついて、武蔵坊は、すたこらと逃げ出し、遮那王と間合いを広くとった。
「そこにいるのは、誰だ!」
扇を当てたのが、狙って、ならば。
こんな闇を貫く目を持つ武芸者か。
勝負あった武蔵坊より、大分技量が上かもしれない。
遮那王は、油断なく身構えた。
が。
……しかし。
月光の中に出て来た者を見て、肩を落とした。
「……なんだ、そなたか」