スタッカート《番外編》
−−…………


夕日のやわらかな熱を背に浴びながら、歩く。




−変わったよ。


−おかしなヤツに会った。馬鹿で、鈍感で…よく泣く。




その言葉が胸を叩く度、ぽつぽつと心にたまる、あたたかな何かが。


十年間抱えて来たわだかまりを薄れさせ、少しばかり心が軽くなったような気がした。



いつの間にか着いていた我が家の前に立ち、深く息を吸う。


ひんやりと冷たいドアノブに手をかける。


カチャリと軽い音を立てて開いたドアの、その向こう。

母が、微笑って立っていた。



ただいま、と。
言った時の声は、何故か掠れてしまった。



いつもの光景、空気。

その中で、思う。





−−…俺も、変われるだろうか。






−対面−
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