スタッカート《番外編》
2
「屈辱。…屈辱だわ」
「なにがだよ」
「馬…佐伯琢磨と廊下に並んでいるという、この状況がよ」
「お前いま俺のこと馬鹿だと呼びそうになっただろ」
「…」
「ちょっとは否定しろよ!」
うるさいわね、と心のなかで悪態をつく。
なんだってこいつはギャーギャーといつもうるさいんだろうか。そう…中学のときも、授業中発言するわりにほとんどが的を得ないもので、はたから見ていて苛々していた。
こんな頭の弱い男と。なんで、私が。
「…中学、高校と、一緒なのよ」
「それは俺もいいてえぞ、清水」
ああ……うるさい。
片足で、佐伯の膝にけりをいれる。ほんの少しうめいた佐伯が私を睨んだとき、真横にある職員室のドアが開いた。
「お、来てたのか。入れ」
無精ひげの生えた担任の顔を間近に見て、なんだか余計にげんなりとした。