スタッカート《番外編》
トキは暫く黙り込むと、きっと無意識なんだろうが、口元を緩めて続けた。
「……頭はいいらしいが、馬鹿で、鈍感で、変態なヤツで…あと、よく泣く」
………は?
俺は目を見開いて、固まった。
あの秀才の伊上が?
何があっても冷静で落ち着いている伊上が?
…そりゃたまに女の子らしい一面も垣間見えるけど…変態は無いだろ、変態は。
清純なイメージにまで亀裂が入り、あまりにも衝撃的な言葉に青ざめる俺を見、トキはきょとんと微かに首をかしげて。
その瞬間、俺は自分の負けを知った。
……俺。
伊上のこと、知っていたつもりで、本当は何もわかってなかったんだ。