−つぐない−
「どうです。奴、死にましたか?」
警官も、山部に目をやりながら尋ねた。
中年男が
「まだ息はあるみたいですが」
「あー、でもこれ、死にますねえ。一応、病院には運びますが、ま、医者も見ないでしょうが」
もうろうとしている山部の耳に、そういう会話が入って来た。
(な、何を言っているのだ。この警官は。こいつらは、一体なんなんだ)

「これでお父さんも浮かばれます」
中年女性が肩を震わせ、目頭を押さえた。
その肩に男性が軽く、手を乗せ
「うん、これでいいんだ、これで」
と頷いた。
警察官は
「仇討ち、上手くいきましたね。このシステムは、まだ導入されて間もないんですが、被害者の遺族から要望があって、審査に通り、犯人が確実だった場合に適用されます。これによって、逮捕、勾留、裁判などが省けますし、懲役でも、数年で娑婆に出て来ることに、難色を示す、遺族にも、ご好評です。死には死を持って償わなければと、本官も思いますよ。岩甥さん」

(あ、仇討ちシステム?
い、イワオイ?そうか、彼らは、俺が轢いた老人の家族。そして俺は親の、ニックキかたきで、仇討ちされたって訳か。そんなのがあったのか。そうか・・・それは・・・仕方ないな。俺が悪いんだし・・・なんか・・・・それでよかったような・・・)
山部は何か、胸のつかえが取れたというか、久々に、清々しい気分になった。
そして山部は深い眠りに入った。



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