枯れゆく大樹~ミドリの日
 軋みは次第に振動に変わり、壁や柱に亀裂が入る。

「まずいな、もうすぐ崩れるぞ」

 ガリエラが通路に目を向けると、早くも無数の蔓や根で埋め尽くされようとしている。

「脱出する間だけでも食い止めてやりたいが、もう警備システムを操作することもできない」

 幹の顔が、苦々しい表情で言う。

「どの道この制御室が崩れれば、自爆装置が作動して施設全体が吹き飛ぶ。何とか抜け出してくれ」

「言われるまでもないさ。先を急ぐんだ」

 二人は踵を返して出て行こうとする。

 だが、背後から太い根が銛のように迫る。

「危ない!」

 気づいたソリスティアがガリエラを突き飛ばす。

「ぐあぅっ!」

 動きが止まったソリスティアの腹を、迫っていた根が貫く。

「ソリスティア!」

「来るな!」

 驚いて戻ろうとするガリエラを、ソリスティアがうずくまったまま制する。

「ここでコンソールを操作して、繁殖を食い止める。…見て分かるだろう。この傷では助からない」

「なんでだよ!俺を助ける理由がどこにある?」

 取り乱して叫ぶガリエラに、座り込んだままでソリスティアが答える。
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