MISS YOU
【秋の木枯らしー15】


病院の一室。


部屋から枯れ落ちる
落ち葉を眺める
朋樹の姿があった。






最後の綱である
思い出を失い、

放心状態に近い様子で
外を一心に眺めている。







その、
前よりやつれ細った姿は
半年前の朋樹を
想像させない程の変貌
ぶりである。







…もう死んでもいい…







自分に残されている
ものもなければ、
信じられるものもない。







神も仏もない状態。

あるのは地獄より苦しい
悲しみの日々しかない。







自分の死を
毎日考える者の気持ちが
分かるだろうか?





どれほど自分の幸せを
願い
どれほど他人が
羨ましいか。







しかし、
朋樹は自分の幸せより
千里の幸せを願った。






だからこうして、
千里にいつまでも
真実を話さない
悲しい日々が続いている







それ程
相手の幸せを願って
いるということだ。






これは
朋樹の性格であるので、
一概にも正しいと
言えるか分からないが、

他人を思いやる気持ちは
このような形で
時として表れることも
ある。








「神谷……か…」







幸せそうな2人を
想像する。





決して自分は入れない
2人の幸せの姿を。





神谷に守られる
千里の幸せそうな顔…

願っているのに、
涙が止まらない…







好きな人の
「幸せな姿を願う辛さ」









それは矛盾した
とても悲しい
人間の想いであった
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