学園天国
ただ、この二人に“妻”と“母”はいない。

浩平の妻であり、美和の母は速水 美奈子(はやみ みなこ)。
彼女は元々体が弱く、美和を生んで二日してから息を引き取った。
生きていたら浩平と同じ三十七歳。
写真を見ると、これまた絶世の美女である。
当然、浩平の心を射止める訳だ。
それに、全体的に美和にそっくり。

恐ろしいものよのう、血筋とは。
私もそういう両親から生まれてたらなぁ……。

なんてまぁ置いといて、私の自己紹介がまだだった。
って言っても紹介すること無いんだよね。
一応作者って位。
某TV番組の“天の声”ってことでよろしく。

「ふぅ……。心配性だな、お父さんは」
お父さんは、いっつも私の心配をしてくれる。
でもしすぎだと思う。
私だって、もう高校一年生だもん。大丈夫だよ。


そんなことを思いながら、時計を見上げる。
今は朝の7時ちょっと前。私が家を出るのは七時三十分だから、まだ時間がある。
ニュースでも見てよっかな。

お父さんは進学校の教師をしてるから、朝はいつも早い。


あーあ、お母さんがいてくれたらなぁ。
そしたら私、一人でいることも無くて、こんなに淋しくだってないのに………。

ううん、こんなわがまま思っちゃダメ。
お父さんはお母さんの分まで私を思ってくれるんだから、私は充分幸せだよ。
一人でも、全然大丈夫!
さっきお父さんにそう言ったんだから、しっかりしないと!

そう意気込んで、両手でガッツポーズする美和。

健気な子やねぇ。
もう私この時点で泣いちゃいそう………。
何を隠そう涙もろいんだ私は。

ホント、私なんてこの年の頃父親の頭に「ゆでたまご」とか言ってたのに……。
なんて小さい人間だったんだ!!
自分の愚かさにまた泣けてくるぜ。











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