屋上の鍵は机の中に
「じゃなくて、すれ違った時に笑われたような気がして。」
またおかしな噂が流れているのだろうか。少し気にかかる。
「そりゃあ、入学早々ひーちゃんを見かけたら嬉しくもなるでしょ。ニコニコもしちゃいますわ。」
「なぜ?変な噂とか、ジンクスとかあるの?」
「まあ、ない訳じゃないけど。それはきっと“いいもの見ちゃった”“目の保養しちゃった”みたいな笑いだと思うよ。」
あるのか。これも後で聞き出そう。
「でも、そういう場合は相手に気付かれないように、すれ違った後に笑うものじゃない?目が合ってる最中に笑うかな。」
僕の容姿が注目を集めてしまうのは認める。ダブルは日本人の中では目立つものだから。
「そう言われてみれば、そうかもね。」
何か顔に付いていたか、前に変な所を見られていたか…
「それより俺はひーちゃんがそんなに気にすることの方が気になるんだよね。」
「え、どうして?」
「鈍感なひーちゃんはいつもだったら気にしてないよ。すれ違い様に微笑まれるなんて日常茶飯事なんだから。」
そうだろうか。
「俺はやっぱりひーちゃんに春の予感と思うわけですが。」
春の予感?
「一日中気になってるなんて、ひとめぼれしちゃったんじゃないの?恋なんじゃないの?」