屋上の鍵は机の中に
気がつくと先ほどまでの緊張感はすっかりどこかへ消えてしまって、落ち着いた気分になっていた。
せっかく来たのだから本を借りていこうと思い、案内図を見て分類を確認した。
螺旋階段を上がって二階へ進む。
館内のつくりは明治大正の洋館を思わせる古めかしさで、螺旋階段から見下ろしているとタイムトラベルしたような錯覚を覚える。
広い広い図書館をややしばらく歩いて、自然科学の分類スペースにたどり着いた。
棚の数が半端じゃない。
探し物が見つかるかどうか不安になった。
高い天井を支えるように作りつけられた本棚にはびっしりと本が並べられている。
目当ての本の題名も著者名も記憶が曖昧で、探しはじめて30分経っても見つからない。
今日は諦めようかという考えが頭をよぎったとき、通路の方からカートを押す音が聞こえてきた。
その音は僕から見えない位置で止まった。
返却された本を棚に戻しているのだろう。梯子を移動させる低い音が聞こえる。
少し迷った末に、局員に尋ねてみることにした。
通路に出ると、カートから本を取り出している局員と目が合った。
「杉下さん。」
同じクラスの杉下礼だった。聞きやすい人でラッキーだ。