屋上の鍵は机の中に
春の昼下がり
四人で街へ出掛けるのは土曜日の午後に決まった。
僕は店決めを請け負ったので、しばしば、どこにしようか考え込んでしまっていた。
昼休み、教室へ戻ってからもそうだった。
――二人が行く店は外そう。駅周辺が中心みたいだから、坂下あたりはどうかな…。
喜ばせたい。おいしいスイーツに目を輝かせる彼女はどんなにかわいいだろう。
つい、そんな方向に思考が向いてしまうので、なかなか店が決まらない。
日が迫っていることを思い出して、気持ちを切り換えようと深呼吸した。
ふと前を見ると、杉下礼が目を細めてこちらを見ていた。
もともと目は狐のようなのだけれど、これは笑っている顔だと思う。
「なあに、ため息なんてついて。今週はずっとそうだって、みんなの噂の的よ。」
杉下は僕の前の席に足を組んで座り、頬杖をついている。
制服を着ていても17歳には見えないほど大人びた雰囲気だ。十も年上の人に諭されている気分になる。
「考え事をしてるだけだよ。週末はどこに行こうかなとね。」
「随分と時間をかけるのね。それに、呼びかけても全然気がつかないくらい真剣に。」
「あ、ごめん。もしかしてずっと待ってた?」