屋上の鍵は机の中に
今日は始業式だった。

僕はこの学園で二度目の春を迎えた。

久しぶりに帰ってきた学校は座っているだけでも疲れてしまう。

式の記憶も学園長の挨拶冒頭で途切れている。

これからまた退屈な日々が繰り返されていくのだろう。

それを示唆しているのがつまらない始業式だ。

いつもと同じで、やる意味がよくわからない。

この名門、森宵学園なら、僕の退屈を打ち破ってくれると思ったのに。

ここも結局は評判どおりの「姫村桜二(ヒメムラオウジ)」を期待していたのだ。

そんなものは周りが作り上げた幻想に過ぎないっていうのに。

知能指数や試験の結果で僕のことを見られるのにはうんざりする。

表面だけじゃなくて、本当の僕を見てほしい。

でも本当の僕が何なのか、自分自身でもよくわかってない。



……このときの僕の心には、大きな氷の塊があった。

蒼白く光って、その存在を僕に主張していた。

心は冷たく、感覚は麻痺していた。

この氷は大きすぎる、もう溶けることはないだろうと諦めていた。

偽りの仮面を貼り付けたまま、本当の自分から目をそらして生きていた。

この日、君に出会うまでは。


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