屋上の鍵は机の中に

「新入生見てると去年を思い出すね。俺は結構ビクビクしてたよ。どんなガリ勉がルームメイトになるんだってね。」

陽光がニヤニヤと笑う。

「はじめて聞いた。ニコニコ人懐こそうにしてたでしょ。どんな噂が流れてたんだよ。」

入る前に流れていた噂は気になるもんだ。

「まず、勉強ばっかりしてて、眼鏡で、暗いんじゃないかって。」
「何を根拠に。」
「特進科のしかもA組なんて雲の上の存在だし、しかも首席だし、しかも歴史上初の高等部特待生編入だし、」

だんだん語気が強くなってきた。

「勉強が趣味じゃなきゃ入れないって誰かが言ってて、じゃあ勉強が趣味なやつってどんなかなって想像が膨らんじゃってさ!」

結果、偏見めいている。

「でも大はずれだった。全然勉強してないし、裸眼だし、暗いと言うよりぼやぼやしてるし、天然だし。」

天然ははじめ入っていなかったはずだ。

「天然じゃないって。みんなと考え方がずれてるだけで。」
「いや、君は天然ボケなんだ!友達に聞けば十中八九そう言う!」

そんなに強く主張されても。

「天才少年はもっとキリッとしてるもんだと思ったけど、性格と頭のよさは関係ないんだね。」
「天才とか言わないでよ。僕は勉強が得意なだけ。創造性ないし。」

ふと、並木道の向こう側にある図書館の方から、女の子が一人歩いてくるのが目に留まった。

< 6 / 37 >

この作品をシェア

pagetop