ギャップ  ~違いの果て~
お前の話を誰が聞く
私は一日にハンカチを2枚持つ。
一枚は、手を拭くため。

もう一枚は・・・


「お前じゃま!!早くどけよ!ガリ勉!!」
もう聞きなれてしまったワードだ。
泥水のシャワー・生ゴミの雨・暴行・みんなの前で恥さらし。


そう。


もう一枚のハンカチは、いじめで流れた涙を拭うため。
助けはないんだ・・。希望は失せたんだ・・。

そう思って、時間がたつのを待つだけだった。



「・・いやだ・・」
いつも小声でつぶやく。
毎日、毎日、怯えるだけ。
教室の扉を開けるとき、いつもは上から黒板消し。
ひどい時も、足を掛けられるくらいだった。




「---ガラッ」
カシャ!!カシャ!グシャッ!!


立ち尽くす私に、生卵の嵐。
黒ゴムで2つに結ったまっくろな髪は、黄色くにごっていく。

(泣くな。泣いてはいけない。)
自分に必死で言い聞かせた。

教室には、大きな笑い声が絶えない。
「キャハハハハ!!!」  「やべぇ。マジウケんだけど!!」

周りからみたら、私は「酷すぎるいじめに苦しむ可哀想な子」
と、簡単にまとめられるだろう。
でも、そうじゃない。
酷すぎるいじめに苦しむのは事実だが、私がいじめられるのにも
無理はない。


金持ちで、地味で、ダサくて、トロくて、ガリ勉で、細いから弱っちくて、
気弱で、欠点だらけのブスだから。


いじめが始まって早3年。中一の春からいじめられてる。


しかたない。しかたない。
私の話なんざ、誰も聞いてくれないから。
私の事を助けてはくれないのだから。





寂しく、死んでく時が来た。


校舎の屋上。

フェンスを乗り越え、


身を乗り出した。



「フフッ。やぁ~っと終わる。バイバイ。」

風が私の背中を押した。

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