【詩】記憶の持続性
突然赤い服をまとった女が現れた。

真っ白な部屋に浮かび上がるような赤は、全身血に染まっているように見えた。 
 
「ようこそ。ここは寛(くつろ)ぎの場所。心ゆくまでお楽しみ下さい」
 
寛ぎの場所?
ここが?
〈私〉が辿り着いた場所はここ?
 
何かがおかしい。
何かが狂っている。
 
いや、もともと狂っていたのだ。
この世界も、この〈私〉も。
 
すべては夢だと思えれば何も怖くはないだろう。
 
これは夢。
そう、狂い始めた「世界」と〈私〉が織り成した夢。 
 
目が覚めればすべて消える。
跡形もなく。すべて。
 
「そう、すべて消える。あなたの身体もあなたの魂も」
 
この人は何を…?
 
「あなたはここに留まる定め。定めならば、それを変えることはかないません。無理に変えようとすれば、溶けてしまう」
 
すべて溶けて、すべて消える。
何もかも。
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