【詩】記憶の持続性
千年の時が経ち、世界は再び胎動を始め、暗闇が創られた。
 
海の子宮からは月が産まれ、空に投げ出された。
そして暗闇を照らし出す。 
 
その月から海にしたたり落ちた血液が固まり、きらきら輝く石となってあちらこちらで光を放つようになった。
 
そのうち太陽と月は交互に地上に顔を出すようになっていた。
 
しばらくすると大地や海に生命が誕生し、景色は作り変えられていった。
 
散らばっていた石も生命たちの手によって夜空に投げられ、そのまま夜空に張り付き、そこで光を放つようになった。
 
相変わらず丘に風は吹かず、シルファはそこから世界を見ていた。
 
何かを探していた。
 
何かを思い出そうとしていた。
 
けれどそれが何であるのかは分からなかった。
 
そして世界は二度目の崩壊を迎えた。
 
この時、生命たちはあまりの突然さにどうすることも出来ず、世界と共に悲鳴を上げながら闇の裂け目に飲まれてしまった。
 
あとには太陽と月、僅かな風とあの丘とシルファ、そして少しだけの生命が残った。 
 
この時シルファは気付いた。
この丘だけが崩れないその理由に。
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