【詩】記憶の持続性
ここは神聖な場所。
ここは生命の樹が根を張る場所。
 
そしてここは約束の地。
 
「彼ら」がここで巡り会うまでは、壊れることはないはずなのだ。
 
シルファの役目はその時が来るまでこの世界に風を送り続けること。
その時がいつ来るのかは分からない。
 
けれど予感はある。
シルファは初めて自分の在るべき姿を知った。
 
「彼ら」はいつ、この世界に誕生するだろうか。
「彼ら」は本当に出会えるのだろうか。
 
出会って欲しい。
抗い、生き抜いて、いつか…。
 
そんなことを思いながら、シルファは形を変えていった。 
 
 
 
やがて五百年が経ち、世界はゆるやかに、しかし確実に新たな生命を産み落としていった。
 
少なかった生命たちの数も増え、海にも森にも息づいていた。
 
大地に一陣の風が吹き抜ける。
 
風の心はシルファの心。
 
風の吹かないあの丘にも、やがて風は届くだろう。
 
「彼ら」の胸に呼び掛けるように。
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