偽りの仲、過去への決別

仮にカズが担任教師の悪口を言っていたとしても、カズの肉親に会わない限り言い逃れができると思っていた。 洋二はそんなせこい考えの担任教師の命令なんて始めから聞く気はなかった。「いや～先生も何かと忙しくて。」 担任教師は辛そうであった。
「そうですか。」 「本当に今日は塾に行くんだなあ。」 担任教師は疑っていた。しかしだからといって洋二を止める手だてがあるわけではなかった。「先生は誰にカズのことを聞いたんですか。」 洋二の質問に担任教師は不愉快な表情を浮かべた。
「そんなことどうでもいいだろう。お前に関係ないだろう。」 明らかに担任教師は動揺した。 洋二は自分の勘を信じていた。 「先生、ひょっとしてうちのクラスではない奴が話しをしたんじゃないですか。」
「何を言っているんだお前は。」 担任教師は黙ってしまった。ここで何か話したらヒロのことがばれてしまうと思った。しかし洋二には何もかもばれてしまっていた。 もう何も話すことが無くなった洋二は職員室を出た。 洋二はすぐに結衣のところに向かった。 結衣は自分の机に座り、１人で考えごとをしていた。 「あの先生、ヒロに何か言われて俺達をカズのところに行かせない気なんだ。」 洋二は結衣に声をかけた。 結衣は大体の察しはついていた。しかしどんな形の行動をとっていいかがわからなかった。 結衣は迷いの森に入り込んでいた。 「やっぱり。」 「それでどうするの。先生の言う通りに放課後残るの。」 「洋二君はどうするの。」 「俺は残らないって言ったよ。塾があるって嘘ついたし。本当は塾あるんだけどさぼるつもりだし。」
洋二は強気だった。家の人間には塾に行っていると思わせていた。これまで洋二は両親に嘘もつかず、何も疑いも持たれなかった。「私、どうしたらいいのかなあ。」 「もちろん行くだろう結衣ちゃん。」 結衣は松山と同じ考えになっていた。
ここで担任教師に刃向かってこれからのことを考えると、何かと支障がでる。だからここは１つ担任教師のいう通りにするのも１つの選択だと思った。 「私、今日は行かない。多分松山君も行かないと思う。」 洋二と結衣は同じ教室にいる松山を見た。