偽りの仲、過去への決別
松山はカズの顔が浮かび上がっていた。どうして昨日カズと喧嘩なんてしてしまったのか後悔していた。 ヒロのことをなぜあんなに庇うのか自分でもわからなかった。確かに洋二の言う通り騙されているのかもしれない。
しかし今はあれだけカズに嫌な思いをさせてしまったことが問題だった。 松山はさすがに弱気になっていた。だから今日は病院に見舞いを行くのは止めようと思った。 松山は視線を感じた。視線の方向を見ると洋二と結衣が見ていた。
2人の表情を見ただけで松山は視線をそらした。 担任教師に自分と同じことを言われて悩んでいるはずだ。それでどうしたらいいのかわからないのだろう。 しかし2人とは話し合うことはなかった。答えは決まっているからだ。 洋二は松山が担任教師の言葉を守るとは思えなかった。 しかし昨日の出来事を思うとカズの見舞いを辞退してくれることが良いと洋二を思っていた。 これ以上カズを興奮させてもろくなことでもない。あんなにヒロの肩を持つ奴とは一緒にいても仕方ない。
放課後、松山が残ることに異議はなかった。 「結衣ちゃんはなぜ行かないんだ。」 結衣には不満があった。松山と違ってカズとの間に支障はないからだ。それにカズのことが好きなのだから。
「私、今日は先生のいう通りにする。」「それじゃ、あのヒロの通りになっていやじゃないのか。」「そんなことどうでもいいじゃない。ヒロ君のことなんて。」 「全然よくない。松山といい、結衣ちゃんといいどうしてあいつに甘いんだ。」 洋二はヒロのことをどうしても許せなかった。事件に直接関係してようがしてまいが、ヒロの手引きでカズがあんな目にあったことには変わりなかった。
なのに松山と結衣がヒロに対して甘い気持ちで接することが気にいらなかった。 「わかった。いいよ。俺1人でカズのところに行くから。」「そんなに怒らないでよ。」 結衣は洋二が怒る気持ちはわかった。
毎日カズの見舞いに行くことが果たして良いことなのだろうか。少しはカズの気持ちを考えて休ませることも必要だと結衣は思っていた。 確かに言い訳かもしれない。でもカズが入院してから結衣はずうと心配して、体も精神も疲れていた。だから少しの間見舞いを控えたほうが良いと思った。
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