偽りの仲、過去への決別
カズが病室を出ていくと、すぐに管野が見舞いにやってきた。 「お前、又来たのかよ。仕事大丈夫か?。」 小室は管野を見つめた。あんなに嫌いだった管野が今は会いたくてしょうがなくなってしまった。
「大丈夫。ちゃんと時間作ってきているから。」 管野には小室が大切に思えた。確かに嫌な側面ばかし見てきた感じがしたが、今からは自分の気持ちを小室にぶつけてみようと思った。 少しずつでも歩みよろうと管野は思っていた。「ねえ~本当に会社辞めるの。」
管野は単刀直入に聞いた。 小室は管野を見つめた。何かしら心の変化があったのか小室は今までの表情とは違ってみえた。「私は辞めてほしくないわ。あなたに。」 「なぜお前がそんなことを言うのか?。それにお前には、関係ないだろう。」
小室は冷たく言い放った。 「関係ないかもしれない。でも……。」 管野が何か隠していることがわかった。 小室はそれが何かわからなかった。 「俺は俺なりに考えたんだ。会社にはもう俺の居場所はないし。」
「辞めてどうするの。この街から出ていくの。」「そうなるだろうな。」 管野は気付いていた。小室がまだ本当はこの街にも、会社にも未練があることを。 小室にとって始めてこんなに自分のことを心配してくれる人間と出会った。
だからこの街、いや管野と離れることが、迷いの原点になってしまった。 管野は意をけっして昨日のことを話そうと思った。 昨日管野は、小室を見舞った後、小室の営業所に向かった。 管野は小室の上司に小室の近況報告をした。
上司は小室の近況なんて興味がなかった。逆に1人欠員が出て困っていた。 小室が今のままでは会社を辞めることを伝えた。上司は一瞬驚いたが、すぐに仕事の顔に戻った。 逆に上司が管野に質問した。なぜ小室のことをそんなに心配するのか。
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