偽りの仲、過去への決別
管野は言った。 「私、小室さんに仕事のことでお世話になったし。」 「そうか。でも君の問題ではなくて小室の問題だろう。」 「私、小室さんが会社辞めるなら、私も会社辞めます。」
「ハア~。」 上司はもちろん、周りにいた同僚達も驚いていた。 管野は自分の気持ちを素直に言った。恥ずかしさなんてなかった。ただ小室の力になりたかっただけであった。 大切な人がこのままでは居なくなってしまうからだ。
昨日の出来事を管野は小室に話した。 小室は凄い形相で管野を睨んだ。 管野はやはり余計なことをしたのか不安になった。しかし小室の顔が急に笑顔に戻った。 「お前凄いなあ~本当。俺はそんなこと言えないなあ~。」 小室はうれしかった。 「私もあの時、よく上司に向かってあんなこと言えたなあと思って。」 管野も笑った。 管野の一言で上司の態度が一変した。そんなに管野が慕っているのならば、小室を会社に引き止めることを約束してくれた。そのことは小室には話さずにいた。 結局、最後の判断は小室の意思によるからだ。管野は決意した。小室がどんな判断をしようが、自分だけは理解をしようと。 「昨日から考えたんだ。このまま逃げてもいけないなあと感じたんだ。どこに行ってもなんか繰り返してしまうみたいで」 小室は今までの自分と決別しようと誓った。 「隣りの少年に教えられたんだよ。人を大切に思う気持ちを。」 小室はカズと松山の今までの話しを知っているかぎり管野に聞かせた。 管野は感動していた。 小室が、カズや松山達に影響されたのがよくわかった。
素晴らしい出会いは思いがけない所にあることを管野は知った。 2人は始めて笑顔で話した。今までのことを。 2人はお互いをわかりあった。 その時、洋二が病室に入ってきた。 「あれ、カズはどこ行きました。」 洋二は小室に尋ねた。
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