姫さんの奴隷様っ!
思い起こせば、両親も兄弟も自らの地位も、何もかも失ってからのスタートだった。きっと、俺のスタートラインは他人よりも後ろに引かれていたんだと今更ながら思う。
幾度となく苦境に立たされたけれど、その度に俺を支えてくれる仲間が居た。
常に腹を抱えて笑い合って、たまには本気で喧嘩できる掛け替えのない仲間達に出会うことができたから、俺は今、この国を背負う覚悟をする。
"お前の判断が誤りだなんて思わない。俺の誇りに懸けて誓ってやるぜ。例え、この身が爛れようとも、この国は守ってみせる。必ずだ"
"少しでも悪いと思っているなら、お前がこの国を強くしてくれよ。ああ、せめて帝国と同等に渡り合えるくらいの強国な。俺の代わりを頼めるのは、クロムしか居ない"
大切なモノを失った代償に得た勝利が正解だったかなんて聞かれたら、不正解だとぽろりと零してしまいそうで。
気張っていなければ、あっという間に呑み込まれそうになる。拭い去ることのできない不安という名の渦に。
だから俺は、その度にアイツに向かって宣言する。
きっと何度もくじけそうになるから、その度に繰り返し、繰り返し。耳にタコができるくらい、しつこく宣誓してやるよ。
「今度こそ、お前との約束、守ってみせるよ――」
もう、数える切れないほどの約束を破ってきた俺だけど、今回ばかりは譲れない。
頬を伝う涙も、今日限り。明日にはきっと渇くから。
ふと、空を仰ぐとアイツが笑っている気がした。
穏やかに凪ぐ風に、そっと包まれる。今日の風が明日の風に変わるとき、昨日までの俺はもう居ない――。
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