姫さんの奴隷様っ!
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"小国"との蔑称で呼ばれる此処、『オルガネラ王国』には不相応であろう豪奢で頑丈そうな鉄の門。それを前にすれば、誰もが槍を携えた門番がやたらとちっぽけに見えるに違いない。
そこに佇む二人の門番が萎びた野菜のようにくたびれて見えたのは、威厳を秘めたそれのせいだけではない。夜通しの警備が祟ったせいなのだ。
一人は大きく欠伸をし、もう一人はこくりこくりと舟を漕ぎ夢の中に居た。
とはいえ、普段は早朝からの来訪者など居ない。それ故、門の解放は日中が主なのだ。
夜中から早朝にかけては施錠をし、不審な者が居ないかの警備と称して一晩中突っ立っているだけのだから、眠気に襲われるのも頷ける。
静寂に包まれた王都の外れにあるこの場所での職務怠慢を咎める上司は居ないに等しい。
門番の上官にあたる王都守備軍の長は、普段から王都の中心街に拠点を置く守備軍の宿舎に滞在している。
滅多なことがない限り王都の外れまで上官が見回りに来ないのは、日常茶飯事のこと。夢の中へと旅立とうとも、叱咤する者は居ないのだから、快く旅立とうと門番達は思ったに違いない。
しかし、今日ばかりはその行動が裏目に出るとは知る由もなかった。
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