正しい恋愛処方箋
スラリとした長身で優雅に歩き、ソファーに腰を下ろした男の人はおじいさんの前に座る私を切れ長の目で観察するように眺めて来る。
「拓海、あまり見るのは女性に失礼だぞ。」
「これは失礼。見かけない方でしたので。」
優雅、それがすっぽりと嵌まる男の人は私に穏やかな笑みを見せ、おじいさんへと視線を移した。
「奏多ちゃん、これは私の孫の拓海だ。此処の社長でもある。」
「初めまして、如月 拓海です。」
ただ目をパチパチとしていた私は社長、と聞いて目を見開き、慌てて立ち上がると深々と頭を下げていた。
「は、初めまして…経理課の葵 奏多です。」
「………もしかして…君が伊織が言うウサギ?」
社長の言葉にがばりと顔を上げて眉を寄せてしまう。
社長の言う伊織は英部長だろう。確か名前が伊織のはず…私は最早ため息しかでない。
「………………ウサギじゃありません。葵 奏多です。」
ムスっとした私に社長は目を丸くした後に噴き出すように笑い出す。それにますますムスっとする私。
「すまない…伊織の言う通り君は可愛らしい女性だと…」
「かわ……」
誰もが振り向くような容姿の社長にそう言われ、顔の温度だけが上がるような気がする。
真っ赤になって俯いた私にただ黙って私と社長を見ていたおじいさんは苦笑を浮かべているようで…