【短編】シャーペン
その瞬間に突然、波留の手が私の顔へと近づいて来た。
咄嗟に目を瞑る。
波留の温かい手が私の瞼へと触れた。
……波留?
「泣いたあとがある…」
そういえば、目が少し腫れてるんだよね。
ほんの少し。
誰も気づかないぐらい。
だって百合だって気づかなかったもん。
それを波留は気づいてくれたの?
「本当のこと全部わかってるから…」
「へっ?」
「茜のことなら全部わかる…」
は…る?
私の鼓動が妙に速くなって、頭もくらくらして来た。
波留がわからない。
「はぁー…茜はやっぱり鈍感だな」
「鈍感じゃないよ!!」
「じゃ、俺の気持ち言ってみろよ」
「………」
波留の気持ちなんてわからない。
波留が何を考えてるのかもわからない。