【短編】シャーペン
私はただ「うん」とうなずいた。
波留の優しさに気づいた瞬間だった。
この時に、私は波留のことが好きになったんだよね。
プリントに答えを書いている間は、波留の優しさと好きだという気持ちの幸せさに浸っていた。
「波留、ありがとう」
今度こそ波留にシャーペンを返した。
が、また波留は受け取ってくれなかった。
私はどうすればいいのよっ。
「やるよ」
「へっ?」
「だから、それやるって…」
波留はシャーペンを指しながら言った。
私は意味を理解するのがやっとで・・・
「……ありがとう」
柄にもなく言葉がスムーズに出て来なかったっけ。
それが私が波留を好きになったエピソードであり、
百合が、波留も私のことを好きだと言い張る理由になる。